遺品整理中に印鑑とプラスチック製のカードが出てくると、「これは実印だろう」「死亡届を出したからカードは不要だろう」と考えがちです。しかし、印鑑の外見だけでは、生前にどのような用途で使われていたかを確定できません。カードについても、発行自治体へ確認する前に処分する必要はありません。
この段階で行いたいのは、実印かどうかを自分で決めることではなく、関係する物を分けて判断を保留することです。印鑑を試しに押したり、カードだけを先に捨てたりせず、家族と自治体、実際の手続先へ順に確認します。
印鑑だけを見て「実印」と決めない

一般に実印と呼ばれるのは、本人が自治体へ印影を登録した印鑑です。大きさ、材質、ケースの豪華さで決まるものではありません。通帳と一緒に入っていても銀行印とは限らず、重要書類のそばにあったという理由だけで実印とも判断できません。
同じ引き出しから出ても四つに分ける
一つの袋へまとめると、カードと印鑑の組み合わせを思い込みで決めてしまうことがあります。同じ保管箱を使う場合も、中では次の四つに分けてください。
- 印鑑本体と印鑑ケース
- 「印鑑登録証」など印鑑登録との関係が考えられるカード
- 印鑑登録証明書
- 印影のある契約書、申請書、委任状などの書類
袋には見つけた部屋や引き出し、発見日を簡潔に書きます。複数人の印鑑が一緒に保管されていた可能性もあるため、「故人の実印」と断定した表示は避け、「寝室机・右引き出しの印鑑」のように事実だけを残すと混同を防げます。
試し押しはせず、印影や番号をむやみに共有しない
登録の有無を確かめるために印鑑を紙へ押しても、自治体への登録状況は分かりません。不要な印影を増やさないためにも、試し押しは控えます。カード番号や証明書の全体写真を家族のグループメッセージへ送る必要もありません。確認に画像が必要な場合は、相手と目的を確かめ、不要な番号や印影が写り込まないようにします。
確認先は家族、発行自治体、進行中の手続先の順に絞る

印鑑類を分けたら、最初に同居家族やほかの相続人へ確認します。故人の引き出しにあっても、配偶者など別の人が使っている印鑑かもしれません。所有者が分からないうちは、処分も使用もしない状態を保ちます。
印鑑登録証は発行自治体へ問い合わせる
カードから発行自治体を読み取れる場合は、その自治体の印鑑登録担当窓口へ連絡します。確認したいのは、故人の死亡に伴う登録の取扱い、カードを返却する必要があるか、窓口へ持参する場合に何が必要かです。全国共通の扱いだと決めず、発行元の案内を優先してください。
問い合わせ前に手元へ置く物
- カードに表示された名称と発行自治体が分かる情報
- 故人の氏名と生前の住所
- 死亡届の提出状況が分かる範囲の情報
- 印鑑登録証明書が見つかっているかどうか
カード番号は、窓口から確認を求められた場合にだけ伝えます。
相続手続で必要な印鑑は、その手続先に確かめる
預貯金、不動産、契約の解約など、手続きによって求められる書類や印鑑は異なります。故人の印鑑を押せば進められると考えず、金融機関や行政窓口など、現在進めている手続先の案内を確認してください。制度全体を調べる入口としては、政府広報オンラインの相続に関する案内も参照できます。
印鑑が誰の物かで意見が分かれている、押印済み書類の効力について判断が必要、相続人間で話し合いが難しいといった場合は、自治体の窓口だけで解決しようとせず、内容に応じて司法書士や弁護士などへ相談します。
搬出期限があっても、印鑑類の判断だけは切り離せる

退去や売却の日程が迫っていても、印鑑類まで同時に処分する必要はありません。小さな保管箱を一つ用意し、印鑑、カード、証明書、押印済み書類を袋ごとに分けて移します。保管担当者と置き場所を家族内で決めれば、家財の仕分けを先へ進めながら確認を続けられます。
確認が終わった物から状態を更新する
問い合わせ後は、「自治体へ確認済み」「返却予定」「家族の所有物」「専門家へ相談中」のように、現在の状態が分かるメモを袋へ添えます。処分日を先に決めるのではなく、誰の物か、返却が必要か、進行中の手続きと関係するかが分かってから次の扱いを決めます。
家一軒分の仕分けや搬出を家族だけで進めにくい場合は、遺品整理の案内で依頼できる内容を確認できます。ただし、印鑑登録証の返却や相続上の判断は作業業者へ任せきりにせず、発行自治体や手続先へ家族が確認する項目として残しておきましょう。
故人の印鑑を見つけた場面で必要なのは、「捨てるか、残すか」の即決ではありません。印鑑本体、登録に関係するカード、証明書、押印済み書類を分け、家族への確認から始めて、発行自治体と実際の手続先へつなぐ。その順序なら、家財整理を止めすぎずに誤廃棄も避けられます。