遺品整理を始めると、目の前にある物を一つずつ「残す」「手放す」と決めることになります。ところが、片付けることばかりに気持ちが向くと、あとになって必要な書類を探し直したり、家族が残したかった物まで処分してしまったりすることがあります。気をつけたいのは、通帳や印鑑のようにひと目で貴重品と分かる物だけではありません。毎月届いていた郵便物が契約先を知る手掛かりになったり、何に使うか分からない一本の鍵が物置や金庫につながったりすることもあります。古いスマートフォンには写真が残っているかもしれませんし、何気なくアルバムをめくったら、写真の裏に家族の名前や日付が書かれていることもあります。遺品整理では、たくさん捨てることより、捨ててからでは取り戻せない物を先に見つけることが大切です。本格的に家財を動かす前に、まず家の中を一度見渡すところから始めます。
最初に一か所へ集めたい重要書類
書類は見つけるたびに細かく分類しようとすると、それだけで時間がかかります。最初は「あとで確認する書類」を入れるケースや箱を一つ決め、そこへ集めておく程度で十分です。家族それぞれが別の場所へ持っていくより、保管場所を一つにしたほうが後から探しやすくなります。
通帳・印鑑・保険や不動産の書類
通帳や印鑑を探すとなると、机の引き出しや金庫を思い浮かべますが、実際の保管場所は家庭によってさまざまです。いつも持ち歩いていたバッグ、洋服の内ポケット、仏壇の引き出し、小さな菓子箱などに入っていることもあります。保険関係の書類、年金や税金の通知、不動産に関する資料なども、古そうだからという理由だけで処分しないようにします。現在も必要な書類なのか、その場では判断できないこともあります。まず種類ごとにまとめ、内容を確認できる状態で残しておけば、片付けを止めずに先へ進めます。
請求書や定期的に届く郵便物
郵便受けや机の上に残った封筒も、すぐ紙ごみに入れないほうがよい物の一つです。電気、ガス、水道、携帯電話、インターネット、新聞、定期購入など、故人が利用していたサービスを知る手掛かりになることがあります。契約書そのものが見つからなくても、毎月の請求書や案内から契約先が分かる場合があります。何か月分も同じ封筒が残っていれば、すべて保管する必要があるとは限りませんが、契約状況が分かるまでは一部を残しておくと確認しやすくなります。不要になったあとも、氏名や住所、契約内容などが記載された書類は、そのまま外から読める状態で処分しないようにします。
保管担当を決めて一覧を残す
重要書類を実家から持ち帰るときに起こりやすいのが、「通帳は誰が持って帰った?」という行き違いです。その場では全員が覚えていても、数週間たつと記憶が曖昧になることがあります。細かな管理表まで作らなくても、「通帳と保険書類は長男が保管」「印鑑は長女が確認中」といった短い記録があれば十分です。スマートフォンで保管箱を撮影して家族へ共有する方法でも構いません。内容を見ても家族だけでは判断できない書類については、無理にその場で結論を出さず、必要に応じて関係する窓口や専門家へ確認できるよう残しておきます。
現金・貴金属・鍵は小さな場所まで確認する
貴重品が必ず金庫や専用ケースに入っているとは限りません。本人にとって取り出しやすかった場所や、「ここなら忘れない」と考えた場所へ分けて保管されていることもあります。衣類や紙類をまとめて袋へ入れる前に、小さな収納や箱の中まで一度確認しておきます。
財布・バッグ・衣類のポケット
普段使っていた財布だけでなく、昔の財布、旅行用バッグ、礼服、冬物のコートなども中を確認します。ポケットから現金や鍵が出てくることもあれば、小さく折ったメモやカードが残っていることもあります。バッグなら外から見える収納だけでなく、内ポケットも確認してから手放します。特に衣類を大量に処分するときは、一枚ずつ丁寧に畳み直す必要はありませんが、ポケットに何も入っていないことだけは見ておきたいところです。封筒に入れた現金が書類の束に紛れている場合もあるため、紙類も中身を見ないまま一括で処分しないようにします。
引き出し・本・食器棚の小箱
アクセサリーや腕時計、古い硬貨などが、立派なケースではなく身近な箱にしまわれていることがあります。菓子箱、薬の空き箱、裁縫箱など、「中身は分かっている」と思い込みやすい物ほど、一度蓋を開けてから判断します。本の間から封筒が出てきたり、食器棚の奥に小さな箱が置かれていたりすることもあります。見覚えのない時計やアクセサリーが出てきたら、その場で価値を決める必要はありません。購入時の箱や保証書などが別の場所から出てくる可能性もあるため、分からない物として一時的に残しておけば十分です。
用途が分からない鍵
鍵が一本出てきても、それだけでは何に使っていたのか分からないことがあります。自宅や物置だけでなく、自転車、車、金庫、南京錠などに使われていた可能性もあります。用途が分からない鍵は、家や収納の確認が終わるまで捨てずに残しておきます。机の引き出しから出てきたのか、車関係の書類と一緒だったのかなど、見つかった場所も用途を考える手掛かりになります。何本も見つかった場合は、すぐ一つの袋へまとめるのではなく、発見場所が分かるようにしておくと後から確認しやすくなります。
スマートフォンとパソコンを初期化しない
古いスマートフォンやパソコンを見つけても、家電としてすぐ処分するのは待ったほうがよいでしょう。端末には家族の写真や連絡先が残っている可能性があり、故人が利用していたサービスを知る手掛かりになることもあります。必要な確認が終わるまでは、初期化や処分をせず本体を保管しておきます。
充電器や周辺機器も一緒に残す
端末を残すなら、近くにある充電器やケーブル、外付けの記録媒体なども一緒にしておきます。古い機器では、あとになって電源を確認しようとしても対応する充電器が見つからないことがあります。似たケーブルが何本もある場合は、無理に組み合わせを決めず、同じ場所から出てきた物をまとめておく程度でも構いません。電源が入らない端末を分解したり、暗証番号を何度も推測して入力したりせず、必要な情報がある場合は、利用していたサービスの正式な手続きや専門的な相談先を確認します。
デジタル上の契約を整理する
動画や音楽の配信サービス、ネット通販、クラウドサービスなどは、紙の契約書が残っていないこともあります。だからといって、故人の端末へ無理にアクセスする必要があるわけではありません。郵便物や利用明細など、家族が正当に確認できる資料から契約先が見つかる場合もあります。解約やデータの取り扱いについては、それぞれのサービスが案内している手続きに沿って確認します。端末そのものだけで判断せず、紙の書類や請求状況など周囲の情報も合わせて見ていくと、利用していたサービスを整理しやすくなります。
写真・手紙・思い出の品は保留箱を作る
写真や手紙は、片付けている最中と、少し時間がたってからでは見え方が変わることがあります。その日は「もう残さなくてもいい」と思った写真を、あとになって別の家族が探すこともあります。判断に迷ったときは、その場で無理に結論を出さず、いったん残しておける場所を作ります。
その場で家族全員の結論を出さない
アルバムや手紙、趣味の品、記念品など、家族によって思い入れが違いそうな物は「保留箱」へ入れておきます。遠方の家族に確認するなら、写真を送って返事を待つ方法もあります。ただし、保留した物がそのまま何か月も残らないよう、「次に家族が集まったときに見る」「○日までに返事をもらう」と、おおよその区切りを決めておくと整理しやすくなります。付箋を一枚貼っただけでは処分品に紛れることがあるため、保留箱そのものを別の部屋や分かりやすい場所へ置いておきます。
写真はデータで共有する方法もある
大量のアルバムを兄弟それぞれが持ち帰るのは難しくても、残したい写真を選んでデータとして共有する方法があります。ただ、急いで写真だけ撮影して原本を捨てる前に、裏面も一度確認してみます。昔の写真には、撮影した年や場所、写っている人の名前が手書きされていることがあり、それ自体が家族の記録になっているからです。すべての写真を残す必要はありません。家族にとって意味のあるものを選び、原本で残すものとデータで共有するものを分けると、保管する量も抑えられます。
処分を始める前に家全体を一度見る
遺品整理では、一部屋を空にしてから次の部屋へ進みたくなります。しかし、大切な物を探す段階では、先に家全体を一度見て回るほうが見つけやすいことがあります。故人がいつも座っていた場所、毎日使っていたバッグ、寝室の机、仏壇、玄関収納など、普段の生活を思い浮かべながら見ていくと、書類や鍵の保管場所にも見当がついてきます。まだ開けていない収納がある状態で家具や袋を大量に搬出してしまうと、後から「あの書類はどこだっただろう」と探し直すのが難しくなります。家族で片付ける場合は、確認済みの場所と、まだ見ていない場所を共有してから本格的な仕分けへ進みます。遺品整理を業者へ依頼する場合も、「全部処分してください」と伝える前に、残したい物や探している物がないかを一度考えてみます。アルバム、腕時計、重要書類など、具体的に探している物があれば写真や特徴を伝えておくと分かりやすくなります。リサイクルジャパンでは、まだ仕分けが終わっていない段階でも、ご家族が残したい品や確認しておきたい場所を伺いながら作業範囲をご相談いただけます。どこから手を付ければよいか迷ったときも、すべてを急いで袋へ詰める必要はありません。まずは、捨ててしまったら取り戻せない物から確認する。そのひと手間が、遺品整理を終えたあとに「残しておけばよかった」と後悔することを減らしてくれます。